DOLCE VITA  ~ コワモテな彼との甘い日々


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「何でなんだ……何でこいつらは、こんなにかわいいんだ」


茫然と呟き、ソファーに座る辛島さんは、膝の上に二匹、左右の肩の上、頭の上、背中、足の甲と猫まみれ。

開店一番乗り、ほかのお客さんがいないという奇跡のような状況でなければ、営業妨害を疑われそうだ。


昨夜、駅前の焼き菓子店で購入したパウンドケーキを餌にして、辛島さんに「猫カフェ」に行ってみたいとお願いした。

二つ返事で承諾してくれた辛島さんは、好みの猫と仲良くなるには朝一番で行ったほうがいいと主張し、十時の開店十分前には店に到着。

入店して五分で、これだ。
人見知り気味の猫も彼にべったりだと言って、店員も目を丸くしていた。


(同じ獣の匂いがするのかしら……? それとも、コイツにだけは逆らってはいけないと本能で察知しているとか……?)


猫たちは、彼に甘えているというより、服従しているように見えなくもない。

取り敢えず、こんなシャッターチャンスを逃しては一生後悔しそうなので、取り出したスマホで連写。彼のスマホでも撮影してあげた。


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