冬よ花弁「序」。彷徨う街で君を探すなら
冥界への合図を送る
波しぶきかかる
不動岩。
最近の検証によれば、
これまで
大師が悟りを得たとされた
御厨人窟は、
その時代
海の中だったと判明した。
**.***.チリンーン、
**.***. チリン…
「迷故三界城っ、悟故十方空、
何処有南北っ、本来無東西 、」
改めてシオンは
自分の頭に乗っけていた
遍路笠を、
手にして
笠に書かれた文字を読む。
迷うが故に
世界は
閉じられた城で
本当は
東も西もなく
どこに南北があるのか
世界は 空 で
この世は限りなく自由
全ては 空 だ
その 空 を求めて
岬で修行する大師は、
己の口に
『明けの明星』が
飛び込んでくるという奇跡
体験をする。
その時見た
空 と 海
二色のみの 眼前の景色に
感銘を受け、
彼の大師は己れを
空海
とした。
行く先々で出会った
お遍路さん達の話を
思い出しながら
シオンは大師の名に
縁ある寺号が掛かけた
立派な門を
見上げた。
この門にも阿吽の像が
聳えて
シオンを睨むから
双子と待ち合わせた
仁王門に馳せる。
もうなんだかー、スゴく昔に
感じるわーっ、、
どんなに寒い雪空に、
灰色の海沿いを歩いても、
高台目指して遍路すれば
笠から湯気が登りそう
だと、シオンは
汗を 手を仰いで 逃がした。
「ようやくっ。着いたー!」
冬の暴風が吹き荒ぶ
海沿いや、崖沿いの遍路道。
双子のボディーガードと同行して
消えたマイケルの足跡を辿る
シオンの遍路旅は4日目。
シオン達は
伊予国から
土佐国に 観光列車で移動して
駅から歩き遍路を
続けた。
県警にマイケルの
本格的捜索依頼をしていた
双子達と合流して次の
早朝から、まず8時間の歩き遍路
次の日は
四国総奥の院へむけて
出発点から山岳遍路道を
3時間弱を歩き、
日付を変え
列車で大きく移動しての
岬を目指して
歩く6時間。
いわゆる スポット遍路だ。
それでも、
「歩くお遍路ってっ、山道とか
海見て歩くからかなー。
なんだか タイムトラベルして、
時間軸とか、別の世界旅してる
気分になるんだよねーっ。」
ねっ?っと、シオンは
隣に腰かける
クールビューティ美人に向かって
首を傾げて見る。
「ちょっと、ロールプレイング
してる、私、感じしますよ。」
岬の高台にある寺は
遍路センターや、宿坊が
充実していて、
シオン達は
ようやく到着したこの地に
寒さに身を寄せて
休憩をする
「アレですか?村人から話を
聞くとか?シオンさん、
オヘンロサン見ると、すぐに
声かける。さすがに驚くよ。」
双子のクールイケメンも、
腰を下ろして
休憩中だ。
「そんなに世俗的じゃなく!!
もっとこうっ、精神世界な
次元旅って感じだよっー。」
シオンは、
三つ巴に座るうちの
自分の体を捩らせて
双子に抗議した。
「でも、ここもオヘンロさんに
聞いて来ましたよ?ね?」
双子クールビューティ美人が、
合わせた背中を
捻って、シオンに
今度は顔を傾げた。
「まあっ、そっなんだけどっ」
シオンは
遍路センターから
境内を見渡した。
正面に本堂、左は大師堂。
そこに続く石畳に
ひときわ目立つ、
いくつか丸みの石を
上の窪みに置いた
大きな石。
あれがっ、『鐘石』ね、、。
シオンの視線に、
双子2人も 意味を感じて
同じ方向を見ているのが
気配でわかった。
霊場1番の標高の寺には
霧の中に五百羅漢像が
並ぶとか、
『逆打ち』をしていると、
大師とすれ違う事があるとか、
あそこの宿坊は女子遍路向きとか
いつの間にか
歩き遍路をする出会いで、
シオンはたくさんの 他愛ない話を
積んでいた。
上から下まで遍路装束の双子に
比べて、シオンは笠と
金剛杖と、簡易の輪袈裟。
にわか遍路丸出しなのが、
かえって
いいのだろう。
「恋愛遍路してたっ、友人の
行方を探してるんですっ。」
見かける遍路行の人に
気兼ねなく声をかけるのも
あるのだろう。
それまでに体験した事、
行った先の情報を
それぞれの
願い、想い、祈り、悩みを
含ませて
教えてくれる人達に会い、
シオン達は この岬の寺に着いた。
土佐の遍路道は
修行の道場というけど、
どこまでも続く空と海の道は、
伊予の山岳空気とは
全く違い
叩きつける潮風の勢いに
何とも言えない広陵さを
シオンは感じて
「行きましょうか。」
と、双子クールイケメンの声に
自然と力が入る。
昨日、
真っ赤に塗られた不動明王に
見送られ
マイケルが姿を消した場所まで、
やっぱり歩き遍路道を
マイケルが歩いたのと
同じく歩いた。
その山遍路道は、遍路でも
推奨されない道だという。
無縁仏の石もやけに目につく。
ちょうど
先達の遍路さんと同行でき、
案内してくれたのだが。
古い時代、
伝染病になると、全滅を恐れて
村を出される。
その際、不憫な追放者には
米や金を集めて持たせた。
病持ちは、
四国に渡り遍路するのだ。
過酷な場所で行き倒れると、
持たされた金で、地元民が
こうして墓を立てるのだと、
手を合わせてシオンに
語ってくれた。
古石の墓、
今でも過酷な場が多々ある。
その証拠か、
途中『草刈りお願いします』と
案内に鎌が下がっていたりする。
奥深い山道は、手入れ遍路が
なければ 獣道になり得る。
遍路道は、
命懸けを匂わせていた。
見晴らしはよくない
沢山の石像と石柱ある峠。
首無し地蔵から先が
奥の院との結界。
先達は
聖と俗の境界だと示してくれた。
双子の気配が針積めた。
どうやら、
この先に件の場所がある?
シオンも思う。
遍路正装の白衣は、
何時行き倒れてもよいと
死に装束を意味し、
人は巡礼を通じ
生まれ変わる。
この白装束で、
巡礼道の空間に入り、
そこで一旦死の世界に入る。
雪の白い中
先達が、纏う身なりを
掴んで 伝えながら
遠い目をした仕草に
シオンの心が酷く揺ぶられた。
独特な雰囲気の
堂を通りすがり過ぎ、
ルートが別れる分岐点。
ヘアピン野苔むす階段を
激下る直通ルートと
清滝経由ルート。
ここで、先達とシオン達は
雪で滑るから、気を付けてと
声掛けて、別れた。
ルートから、
少し横道に行くと、双子に
促されたからだ。
洞窟の中?大師の像がある、、
てっきり、崖道か、獣道で
マイケルは消えたと
シオンは思ってい為、
意外な場所で 驚いた。
もう、
階段を降りたら
四国総奥の院が
急な斜面の段差の中
山中に佇ずむ場所で、
古くて趣きのある大きく
立派な建物の屋根も近い。
境内は崖の途中にあり、
本堂は
清水の舞台と同じ
懸造という
舞台造りとなって
そこかしこに
滝や水が流れている。
四国88ヶ所総奥之院。
遍路の締めくくりとして
大師がいる
この地を 車でも沢山の人が訪れる。
そんなに離れた場所ではない。
言い換えれば
聖域ではあるが、、
「本当にっ、ここ?」
シオンの問いかけに双子は
頷いた。
これはっ、もう、神隠しの域
じゃないのっ?
山道なら少し分け入って探してと
考えてたけどっ、これじゃあ。
洞窟でシオンは、
唖然としたのだ。
**.***.チリンーン、
**.***. チリン…
「シオンさん? どうしました?」
突然、
双子のクールイケメンに
声を掛けられシオンは、
昨日の現場から、意識を戻す。
「あっ、ごめんなさいっ!
一応ほらっ、マイケルの消えた
所を思って鳴らそうかなって、」
シオンは、
そう説明しながら、
手に持った スベスベの
肌触り良い石を
改めた。
土佐の国、岬にある寺の
『鐘石』は、
その音が冥界に届くと、
別のお遍路さん に聞いて、
この寺まで わざわざシオン達は
来たのだ。
「この音を届けたい人をっ、
思い浮かべながらっ!」
「この 置かれたイシ、ですね、」
「コノ、窪みを 叩くんだ!!」
せーのーーっ!!!
その音が
冥界の奥底まで
その人の耳元に届く。
父母、先祖、かつての友人に。
届けっ!!
**.***.キーンン
**.***.カーンン**.***.コーンーン
**.***. …
不動岩。
最近の検証によれば、
これまで
大師が悟りを得たとされた
御厨人窟は、
その時代
海の中だったと判明した。
**.***.チリンーン、
**.***. チリン…
「迷故三界城っ、悟故十方空、
何処有南北っ、本来無東西 、」
改めてシオンは
自分の頭に乗っけていた
遍路笠を、
手にして
笠に書かれた文字を読む。
迷うが故に
世界は
閉じられた城で
本当は
東も西もなく
どこに南北があるのか
世界は 空 で
この世は限りなく自由
全ては 空 だ
その 空 を求めて
岬で修行する大師は、
己の口に
『明けの明星』が
飛び込んでくるという奇跡
体験をする。
その時見た
空 と 海
二色のみの 眼前の景色に
感銘を受け、
彼の大師は己れを
空海
とした。
行く先々で出会った
お遍路さん達の話を
思い出しながら
シオンは大師の名に
縁ある寺号が掛かけた
立派な門を
見上げた。
この門にも阿吽の像が
聳えて
シオンを睨むから
双子と待ち合わせた
仁王門に馳せる。
もうなんだかー、スゴく昔に
感じるわーっ、、
どんなに寒い雪空に、
灰色の海沿いを歩いても、
高台目指して遍路すれば
笠から湯気が登りそう
だと、シオンは
汗を 手を仰いで 逃がした。
「ようやくっ。着いたー!」
冬の暴風が吹き荒ぶ
海沿いや、崖沿いの遍路道。
双子のボディーガードと同行して
消えたマイケルの足跡を辿る
シオンの遍路旅は4日目。
シオン達は
伊予国から
土佐国に 観光列車で移動して
駅から歩き遍路を
続けた。
県警にマイケルの
本格的捜索依頼をしていた
双子達と合流して次の
早朝から、まず8時間の歩き遍路
次の日は
四国総奥の院へむけて
出発点から山岳遍路道を
3時間弱を歩き、
日付を変え
列車で大きく移動しての
岬を目指して
歩く6時間。
いわゆる スポット遍路だ。
それでも、
「歩くお遍路ってっ、山道とか
海見て歩くからかなー。
なんだか タイムトラベルして、
時間軸とか、別の世界旅してる
気分になるんだよねーっ。」
ねっ?っと、シオンは
隣に腰かける
クールビューティ美人に向かって
首を傾げて見る。
「ちょっと、ロールプレイング
してる、私、感じしますよ。」
岬の高台にある寺は
遍路センターや、宿坊が
充実していて、
シオン達は
ようやく到着したこの地に
寒さに身を寄せて
休憩をする
「アレですか?村人から話を
聞くとか?シオンさん、
オヘンロサン見ると、すぐに
声かける。さすがに驚くよ。」
双子のクールイケメンも、
腰を下ろして
休憩中だ。
「そんなに世俗的じゃなく!!
もっとこうっ、精神世界な
次元旅って感じだよっー。」
シオンは、
三つ巴に座るうちの
自分の体を捩らせて
双子に抗議した。
「でも、ここもオヘンロさんに
聞いて来ましたよ?ね?」
双子クールビューティ美人が、
合わせた背中を
捻って、シオンに
今度は顔を傾げた。
「まあっ、そっなんだけどっ」
シオンは
遍路センターから
境内を見渡した。
正面に本堂、左は大師堂。
そこに続く石畳に
ひときわ目立つ、
いくつか丸みの石を
上の窪みに置いた
大きな石。
あれがっ、『鐘石』ね、、。
シオンの視線に、
双子2人も 意味を感じて
同じ方向を見ているのが
気配でわかった。
霊場1番の標高の寺には
霧の中に五百羅漢像が
並ぶとか、
『逆打ち』をしていると、
大師とすれ違う事があるとか、
あそこの宿坊は女子遍路向きとか
いつの間にか
歩き遍路をする出会いで、
シオンはたくさんの 他愛ない話を
積んでいた。
上から下まで遍路装束の双子に
比べて、シオンは笠と
金剛杖と、簡易の輪袈裟。
にわか遍路丸出しなのが、
かえって
いいのだろう。
「恋愛遍路してたっ、友人の
行方を探してるんですっ。」
見かける遍路行の人に
気兼ねなく声をかけるのも
あるのだろう。
それまでに体験した事、
行った先の情報を
それぞれの
願い、想い、祈り、悩みを
含ませて
教えてくれる人達に会い、
シオン達は この岬の寺に着いた。
土佐の遍路道は
修行の道場というけど、
どこまでも続く空と海の道は、
伊予の山岳空気とは
全く違い
叩きつける潮風の勢いに
何とも言えない広陵さを
シオンは感じて
「行きましょうか。」
と、双子クールイケメンの声に
自然と力が入る。
昨日、
真っ赤に塗られた不動明王に
見送られ
マイケルが姿を消した場所まで、
やっぱり歩き遍路道を
マイケルが歩いたのと
同じく歩いた。
その山遍路道は、遍路でも
推奨されない道だという。
無縁仏の石もやけに目につく。
ちょうど
先達の遍路さんと同行でき、
案内してくれたのだが。
古い時代、
伝染病になると、全滅を恐れて
村を出される。
その際、不憫な追放者には
米や金を集めて持たせた。
病持ちは、
四国に渡り遍路するのだ。
過酷な場所で行き倒れると、
持たされた金で、地元民が
こうして墓を立てるのだと、
手を合わせてシオンに
語ってくれた。
古石の墓、
今でも過酷な場が多々ある。
その証拠か、
途中『草刈りお願いします』と
案内に鎌が下がっていたりする。
奥深い山道は、手入れ遍路が
なければ 獣道になり得る。
遍路道は、
命懸けを匂わせていた。
見晴らしはよくない
沢山の石像と石柱ある峠。
首無し地蔵から先が
奥の院との結界。
先達は
聖と俗の境界だと示してくれた。
双子の気配が針積めた。
どうやら、
この先に件の場所がある?
シオンも思う。
遍路正装の白衣は、
何時行き倒れてもよいと
死に装束を意味し、
人は巡礼を通じ
生まれ変わる。
この白装束で、
巡礼道の空間に入り、
そこで一旦死の世界に入る。
雪の白い中
先達が、纏う身なりを
掴んで 伝えながら
遠い目をした仕草に
シオンの心が酷く揺ぶられた。
独特な雰囲気の
堂を通りすがり過ぎ、
ルートが別れる分岐点。
ヘアピン野苔むす階段を
激下る直通ルートと
清滝経由ルート。
ここで、先達とシオン達は
雪で滑るから、気を付けてと
声掛けて、別れた。
ルートから、
少し横道に行くと、双子に
促されたからだ。
洞窟の中?大師の像がある、、
てっきり、崖道か、獣道で
マイケルは消えたと
シオンは思ってい為、
意外な場所で 驚いた。
もう、
階段を降りたら
四国総奥の院が
急な斜面の段差の中
山中に佇ずむ場所で、
古くて趣きのある大きく
立派な建物の屋根も近い。
境内は崖の途中にあり、
本堂は
清水の舞台と同じ
懸造という
舞台造りとなって
そこかしこに
滝や水が流れている。
四国88ヶ所総奥之院。
遍路の締めくくりとして
大師がいる
この地を 車でも沢山の人が訪れる。
そんなに離れた場所ではない。
言い換えれば
聖域ではあるが、、
「本当にっ、ここ?」
シオンの問いかけに双子は
頷いた。
これはっ、もう、神隠しの域
じゃないのっ?
山道なら少し分け入って探してと
考えてたけどっ、これじゃあ。
洞窟でシオンは、
唖然としたのだ。
**.***.チリンーン、
**.***. チリン…
「シオンさん? どうしました?」
突然、
双子のクールイケメンに
声を掛けられシオンは、
昨日の現場から、意識を戻す。
「あっ、ごめんなさいっ!
一応ほらっ、マイケルの消えた
所を思って鳴らそうかなって、」
シオンは、
そう説明しながら、
手に持った スベスベの
肌触り良い石を
改めた。
土佐の国、岬にある寺の
『鐘石』は、
その音が冥界に届くと、
別のお遍路さん に聞いて、
この寺まで わざわざシオン達は
来たのだ。
「この音を届けたい人をっ、
思い浮かべながらっ!」
「この 置かれたイシ、ですね、」
「コノ、窪みを 叩くんだ!!」
せーのーーっ!!!
その音が
冥界の奥底まで
その人の耳元に届く。
父母、先祖、かつての友人に。
届けっ!!
**.***.キーンン
**.***.カーンン**.***.コーンーン
**.***. …