看取り愛~あなたの子は大切に育てます~

奇跡の夜

そして、何とか交替で火の番をし、1週間で焼成作業を終えた。

あとは、そのまま冷めるまで数日待つのだ。

高木と佐藤も、一段落しこの日の夕方には一旦帰って行った。

久しぶりに落ち着いたふたりの時間。

この日は夜も暖かい風が吹いていた。

空を見上げると満月。

山小屋の前に置かれたベンチで、温かい紅茶を飲みながら並んで空を見上げるふたり。

澄んだ空気に満天の星空。

体は疲れているはずなのに、達成感からか疲れを感じない。

言葉は交わさなくても、通じ合っている不思議な感覚。声も出さないが不思議と同時に見つめ合う。そして、お互いが引き寄せられるように口づけを交わす。

涼太朗にとってはファーストキス。病気の事を思う事もなく、今日が運命の瞬間だとふたり引き寄せられる。

言葉を交わす事なくどちらともなく立ち上がり、手をつなぎ山小屋の中に入る。

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