看取り愛~あなたの子は大切に育てます~
だが、現実は残酷なものだ。
果歩が臨月に入った頃には、殆ど意識はなく一日の大半を眠っている涼太朗。
起きていても、果歩が声を掛けると頷く程度。
それでもベッドの傍に寄り添い、話をする果歩。それは、天気の事だったり、生まれてくるわが子の事だったり、他愛のない話。
そんな時、突然…
『プツッ』と音がした気がした。
ジンワリと濡れる足元。
「あっ、破水した」と果歩は驚く。朝から鈍い痛みがあったのだが、まさかまだ臨月に入ったばかりで陣痛だとは思わなかったのだ。
寝ている涼太朗に、
「涼太朗さん、破水したようです。ここを離れますね」聞こえているかはわからないが、声を掛けた。
部屋を出て、尚子に電話する。
「果歩ちゃんどうしたの?何かあった?」
「今、破水しました。鈍い痛みが朝からあったんですが、まさか陣痛だとは思わなくて」
「わかったわ。すぐに行くわね。助産師さんにもこちらから連絡を入れるわ」
「ありがとうございます」