終わらない夢
チャプター4
Chapter4 思い出と出会い
Yuna→Sakuya
いつもと変わるわけではない景色。変わってはいけない景色。変えてはいけない景色。どれが欠けても、僕は存在しなかった。
いつのことだったか。生贄に差し出されると聞いた時は、絶望しかなかった。でも、あの時は彼女が支えてくれた。愛して、愛されていた。
「本当に、行くの?」
「誰かが行かなきゃいけない。なら、僕が行くしかないのと同じだよ」
分かってはいたが、納得いかないような顔だった。おそらく、僕も似たそれをしていただろう。それでも、行かねばならないという覚悟と同じくらい理不尽に耐えがたい気持ちもあった。
「なら、私も行く」
「ダメだ、君は…優奈は、ここで待つんだ」
「でも」
気持ちだけ受け取ろうと言って、足早に去った。気持ちを分つなら早い方がいい。
神を祀る祭壇で、しばらく待ってみる。本音は、何も起こらないなら帰りたかった。それほど、心が弱い人間なんだ。
そのとき、急に当たりが真っ暗になった。夜ではない暗さ。無のような怖さ。辺りを見渡すと、ひとりの男性が立っていた。
「君が、話の結末か」
「…ええ。覚悟はできてます」
「その言葉、虚にするには惜しいぞ」
誰がなんと言おうと、心に決めた。ただ、気がかりもあった。僕が生贄になったゆえを何も聞かされていなかった。『村の危機』とは聞いたが、建前であることは毛頭分かっていた。
本当は何をされるんだろう。てっきり殺されたりするのかと思っていたが、違った。
「……」
このとき、あの男性が何かを言っていたのは覚えてる。そして、記憶はいつもここからぽつぽつとしか思い出せない。
まじないでもあるのだろうか。
それから数年、数十年と様々な場所を転々とした。それぞれの場所で学ぶことがあった。だが、なにか危機を脱するような情報は手に入らなかった。
そんな時に、河津村を知った。かつて神の闘争が行われた地。ここで修行を積めば、村を助けられるらしい。正直、何十年もこんな感じだから村のことなど忘れたかった。しかし神は全てを知る必要があるらしく、忘れることは許されなかった。
…生き地獄もいい所だと思った。
はじめて門堂の境内に入ったとき、ひとつの鈴を拾った。見た目は少し寂れた鈴だが、どこか懐かしい匂いがした。忘れてしまいそうなふるさとの思い出。頭の中では欠片になっていく彼女との記憶。そのなのに増えていく神の知識。どうでもいいとさえ思えてしまうこの世界の理。
僕はうつつを抜かすことすら億劫になり始めていた。
Yuna→Sakuya
いつもと変わるわけではない景色。変わってはいけない景色。変えてはいけない景色。どれが欠けても、僕は存在しなかった。
いつのことだったか。生贄に差し出されると聞いた時は、絶望しかなかった。でも、あの時は彼女が支えてくれた。愛して、愛されていた。
「本当に、行くの?」
「誰かが行かなきゃいけない。なら、僕が行くしかないのと同じだよ」
分かってはいたが、納得いかないような顔だった。おそらく、僕も似たそれをしていただろう。それでも、行かねばならないという覚悟と同じくらい理不尽に耐えがたい気持ちもあった。
「なら、私も行く」
「ダメだ、君は…優奈は、ここで待つんだ」
「でも」
気持ちだけ受け取ろうと言って、足早に去った。気持ちを分つなら早い方がいい。
神を祀る祭壇で、しばらく待ってみる。本音は、何も起こらないなら帰りたかった。それほど、心が弱い人間なんだ。
そのとき、急に当たりが真っ暗になった。夜ではない暗さ。無のような怖さ。辺りを見渡すと、ひとりの男性が立っていた。
「君が、話の結末か」
「…ええ。覚悟はできてます」
「その言葉、虚にするには惜しいぞ」
誰がなんと言おうと、心に決めた。ただ、気がかりもあった。僕が生贄になったゆえを何も聞かされていなかった。『村の危機』とは聞いたが、建前であることは毛頭分かっていた。
本当は何をされるんだろう。てっきり殺されたりするのかと思っていたが、違った。
「……」
このとき、あの男性が何かを言っていたのは覚えてる。そして、記憶はいつもここからぽつぽつとしか思い出せない。
まじないでもあるのだろうか。
それから数年、数十年と様々な場所を転々とした。それぞれの場所で学ぶことがあった。だが、なにか危機を脱するような情報は手に入らなかった。
そんな時に、河津村を知った。かつて神の闘争が行われた地。ここで修行を積めば、村を助けられるらしい。正直、何十年もこんな感じだから村のことなど忘れたかった。しかし神は全てを知る必要があるらしく、忘れることは許されなかった。
…生き地獄もいい所だと思った。
はじめて門堂の境内に入ったとき、ひとつの鈴を拾った。見た目は少し寂れた鈴だが、どこか懐かしい匂いがした。忘れてしまいそうなふるさとの思い出。頭の中では欠片になっていく彼女との記憶。そのなのに増えていく神の知識。どうでもいいとさえ思えてしまうこの世界の理。
僕はうつつを抜かすことすら億劫になり始めていた。