終わらない夢
日が高く昇る刻、少しずつ熱さを帯びてきている。
父が言っていた『会えない人と会える』というのが気になっていた。なぜそこに惹かれるのかは、まったく分からない。
「着いたな」
「…ふつうだけど?」
「『見た目』はな」
……天国か何かに繋がる場所なのだろうか。
「ほら、お参りするぞ。二礼二拍手一礼だ」
「お父さん、お賽銭は?」
「あっ、忘れてた」
ほんとに仕事場でやっていけているのだろうか…。
父と二人、数秒の間、神に祈りを捧げる。どこかの噂で、お願いするときは住所を言わないといけないとか聞いたこともある気がする。そこら辺は情報が多くてどれが本当なのか、今もよく分かってない。
「よし、お参りもできたし。帰って荷物整理するか」
「うん」
結局何か特別なことが起きるでもなく、ふつうに終わるんだろうと思った。ただ、会えない人というのが気になった。遠くに居る友人と会えるのだろうか。もしそうなら、仲の良かった人と…。
そのとき、同い年くらいの青年が声をかけてきた。彼は神主のような服を着ていた。
「はじめまして。お引越しされた方ですか?」
「ええ。今日からお世話になるので、ご挨拶に」
「そうでしたか。…失礼ですが、お二人とも瞳の色が美しくありますね。以前、ここに来られたことは?」
瞳の色…私と父は紺色のような色。光が当たれば、けっこう明るくなるらしい。だが、それは生まれつきの話。ここに来た覚えなどない。
「初めてだけど?」
「いえ。…やはり」
「……?」
彼は深く考え込む様子だった。そこで気付いた。彼も私たちと同じ瞳の色をしていた。この色は、血筋だと思っていたが、そうではないのか。あるいはごく少数の色なのか。
「それでは、私たちはお暇しようかな。失礼しました。行こう、優奈」
「う、うん」
私は去り際にもう一度彼の方を見たが、もう彼の姿はなかった。
「え…?」

「あんな若い子が神主とは。驚いたなあ」
「ふつうなんじゃないの?」
「あれだけ若い子は見たことがない…うーん」
一度考え込むとなかなか止まらないのは父の癖。悪いとは言わないけど、何時間もそれについて研究とかするのは、さすがに少し面倒なところがある。そこまで探究心が強いなら研究者に向いていそうだが、そんな意思はないらしい。
「そうだ、優奈は、なにをお願いしたんだ?」
「ふつうに暮らせますようにって。もう引越し云々は飽きてきたし。お父さんは?」
「フフフ…これは願い事を言うと叶わなくなるんだよ。だからお父さんの願い事は言えないなあ」
「えっ、ずるい!」
私の無知がもたらした結果と言えば、そこまでだけど…やはり父は天然たらしになれそうなタイプだと、今も思う。実際、学生の頃はそう言われていた、といつかだれかに聞いたことがある。当の本人に自覚は無いらしいが。
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