終わらない夢
「阿波路の花屋って言ったら、ここかな?」
着いたのは、さっきとはまた違う雰囲気を醸し出す花屋。夏海さんのところより、かなりポップで入りやすい印象だ。
「ここで聞けばいいんだね」
「そ、じゃあ行くか!」
店内に入ると、外観より狭く感じる。商品が陳列してあるから、当たり前だろうけど。
すると、奥から若い男性が出てきた。
「いらっしゃい。お?翔もいるのか!久しぶりだな」
「久しぶり!悠里さん」
「それで、隣の…ガールフレンドか?マセてるなあ」
…私のこと?
「いや、違います」
「ははは、冗談だよ。で、なんの花が欲しい?」
「…優奈、なんの花だっけ」
「えっと、ユーカリの花が欲しくて。ここなら置いてるんじゃないかって、夏海さんが」
「夏海が?」
ふーんと言いながら考え込む悠里さんは、しばらくして何か分かったかのように、そそくさと準備をする。
「はい。たぶんこれのことだな。お金はいいよ」
「ありがと!悠里さん!」
「…あの」
「ん?」
興味が湧いたから、深く考えず夏海さんのことを聞いてみようと思った。
「夏海さんとの関係は?」
「夏海は…俺の彼女だよ。それが何か?」
「…いえ。仲が良いんだな、と」
夏海、と呼び捨てで呼んでいたから気になっただけのこと。あと数分もしたら忘れそうなことだ。
「よし、じゃあそんな君たちには特別情報をあげよう」
「えっなになに!?」
「聞いて驚け。この近所で、思い出の中の人物と会えるシロモノがあるらしいんだ。…なんでも屋なら、調べてくれないか?」
思い出の中の…私が知っているのは、会えないひとと会える鈴。違うようだけど、繋がっていそうな気もした。
「んじゃ、仕事に戻るよ。わざわざありがとね」
ニッと笑って店の奥に戻っていった。取り残されたような私たちは、目を合わせる。心当たりがある。さっき、見たもの。
「あれ、思い出?」
「分からない…」
仮にこれがそうなのだとしたら…いや、私が持っていてなんのメリットがあるのだろうか。カケラが落ちていく、私の思い出なんて。
「…あって、くれる?」
その隣で翔があっけらかんとした態度で、私のことを不思議そうに見ていたのに気付かなかった。
「思い出って、作るもんじゃないの?」
「え?」
「近くにいる大事なひとと話したり遊んだりしたことを、しばらく大事に取っておく。これじゃダメ?」
私は少しあ然とした。まさか、翔からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。
「ほら、難しいことはよく分かんないから、早く行こうぜー」
ひょっとして、私よりよっぽど大人なのかもね。
「……うん」
着いたのは、さっきとはまた違う雰囲気を醸し出す花屋。夏海さんのところより、かなりポップで入りやすい印象だ。
「ここで聞けばいいんだね」
「そ、じゃあ行くか!」
店内に入ると、外観より狭く感じる。商品が陳列してあるから、当たり前だろうけど。
すると、奥から若い男性が出てきた。
「いらっしゃい。お?翔もいるのか!久しぶりだな」
「久しぶり!悠里さん」
「それで、隣の…ガールフレンドか?マセてるなあ」
…私のこと?
「いや、違います」
「ははは、冗談だよ。で、なんの花が欲しい?」
「…優奈、なんの花だっけ」
「えっと、ユーカリの花が欲しくて。ここなら置いてるんじゃないかって、夏海さんが」
「夏海が?」
ふーんと言いながら考え込む悠里さんは、しばらくして何か分かったかのように、そそくさと準備をする。
「はい。たぶんこれのことだな。お金はいいよ」
「ありがと!悠里さん!」
「…あの」
「ん?」
興味が湧いたから、深く考えず夏海さんのことを聞いてみようと思った。
「夏海さんとの関係は?」
「夏海は…俺の彼女だよ。それが何か?」
「…いえ。仲が良いんだな、と」
夏海、と呼び捨てで呼んでいたから気になっただけのこと。あと数分もしたら忘れそうなことだ。
「よし、じゃあそんな君たちには特別情報をあげよう」
「えっなになに!?」
「聞いて驚け。この近所で、思い出の中の人物と会えるシロモノがあるらしいんだ。…なんでも屋なら、調べてくれないか?」
思い出の中の…私が知っているのは、会えないひとと会える鈴。違うようだけど、繋がっていそうな気もした。
「んじゃ、仕事に戻るよ。わざわざありがとね」
ニッと笑って店の奥に戻っていった。取り残されたような私たちは、目を合わせる。心当たりがある。さっき、見たもの。
「あれ、思い出?」
「分からない…」
仮にこれがそうなのだとしたら…いや、私が持っていてなんのメリットがあるのだろうか。カケラが落ちていく、私の思い出なんて。
「…あって、くれる?」
その隣で翔があっけらかんとした態度で、私のことを不思議そうに見ていたのに気付かなかった。
「思い出って、作るもんじゃないの?」
「え?」
「近くにいる大事なひとと話したり遊んだりしたことを、しばらく大事に取っておく。これじゃダメ?」
私は少しあ然とした。まさか、翔からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。
「ほら、難しいことはよく分かんないから、早く行こうぜー」
ひょっとして、私よりよっぽど大人なのかもね。
「……うん」