終わらない夢
「う……」
目を開けると、とても広い…広場?
鈴は、少し黒ずんでいる。無理な使い方をしてしまったか。
「ん…こ、こは」
「翔、大丈夫?」
「あ、ああ…なんとか」
ここのどこに、雪がいるんだろうか。こんなに暗いと、分かるものも分からない。
少し遠くにある出入り口らしき所から外は、本当にまだ暗闇だ。おまけにこの敷地内も、光が少ないから足元が暗すぎる。遊具も見当たらない。
「やっと来てくれたの?優奈」
「っ!」
恐れていた声が後ろから聞こえた。
「こっちこっち」
「どこ見てるの〜?」
「えへへ!優奈ってばキョロキョロしちゃって。可愛いねえ」
「ねえ、いい加減にして!」
声を荒げると、ずっと遠くの方まで響いた。いったいどこなんだ…?
「優奈、ヤツか?」
「うん。でも、どこに…」
「昼にでも来れたのに。なんでこんな真夜中に来たのかなあ?」
「…別に。こっちの用事」
実は、鈴は昼の間はとても使いにくい。今まで何度か昼に母を映そうとして、何も映らなかった。夜だとかならずできるのに。それが今回も当てはまると思った。
「まあ、夜にしか人の移動ってできないからね。これ」
「なんだ、お見通しならわざわざ聞かなくてもいいのに」
「へえ…ずいぶん口が達者になったんだ。前は泣いてばっかりのひ弱な女だったのに。思い出すだけで虫唾が走るよ」
姿がほとんど見えなくても、声からイライラしてるのが伝わる。
「ひとつ聞かせて。なんで私を狙うの。なんで翔の家族を奪ったの」
「…カケル?ああ、あの生意気小僧のこと?翔って言うんだ。あいつは裏切り者だったから殺しただけ。翔クンからしたら、両親は私たち神楽の裏切り者。だから殺した」
「…お前、それは…」
翔の両親が、神楽組の裏切り?
両親は、何らかの形で関わっていた?
…まずい。
「とう、さん…かあ、さん……」
「えへへ!びっくりした?ねえねえ、今どんなキブン?」
「……」
「か、翔っ…」
「ねえねえ聞かせてよ翔クン。いま、ど〜んなキブン?えへへ〜!」
こんなにもおかしくなれるのか、人間は。いったい何をしたら、そんな風になれる…?
「許さねえ…。お前のこと、ダイキライだ!」
「大嫌い?私のこと、大嫌い??えへへ、もっと嫌いになりなよ!恨んでよ!それを私がぜ〜んぶ潰すの!!」
何を言ってるんだろう、このひとは…?私じゃ理解できないよ…。
とても、怖いよ。
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