終わらない夢
Yuna→Ruka

雪と初めて会ったのは、小学4年生の時。父親が再婚して、連れて帰って来たお義母さんの娘が雪だった。当時、雪はとても人見知りでお義母さんと話してる所くらいしか見たことがなかった。でも、平和だった。それでも幸せみたいなものがあった。
だから、限界が来たんだと思う。お義母さんは酒に溺れ、お父さんはギャンブルに走った。家は荒れて、毎日喧嘩をしていた。私たちは、部屋に隠れてることしかできなかった。
それでも、私たちは楽しみを見つけていた。私は絵を描くこと。雪は歌うこと。泣きそうになっても、そのことを考えたら、大丈夫な気がしていた。
でも、お義母さんにそれをしていることが見つかった。とても怒られた。雪はずっと泣いていた。今までにないくらいの涙を流した。
雪が中学生に上がるときに、雪はお義母さんと引っ越すことが決まった。でも、雪は怒られた一件以来、お義母さんのことが怖くてたまらないように見えた。だから、お父さんと一緒に引っ越すことをなんとか押し通した。これでもお姉ちゃんだから、妹のために、最後にしてあげたいと思った。

それが間違いと気付いたのは、犯罪グループによる放火事件が起こってからだった。ちょうど雪が住んでいる地区だったから、慌てて連絡した。あの時のやりとりは、ずっと忘れない。
「ねえ、大丈夫?火災があったって聞いたけど…」
『えへへ…お姉ちゃん、私、お友達見つけたよ』
「えっと、お友達は大丈夫だったってこと?」
『そう。いいお友達。私、その子のこと大好きなんだよ』
「それは、よかった。怪我とかしてない?家は大丈夫?」
『ぜんぶ燃やしたよ。…その子の家も』
「燃やした?あんた、何したの!?」
『そのままだよ。友達が構ってくれないから。私、大好きなのに』
「ちょっと待ちなさい雪、どういうことか説明して!」
『お姉ちゃん、大事なとこでバカだよね。…ま、雇ったんだけどね。金を積んだらなんでもやってくれるひとたち。男って案外単純でいいね〜。えへへ!』
「…あんた、自分が何したのか分かってるの?」
『うん。だって、今目の前で友達の家が燃えてるんだもん!』
「お義母さんと一緒にそっちに行く。一緒に—」
『うるさいなあ。バカお姉ちゃんは黙っててよ。やっとおもちゃが見つかったのに』
「本当に…どうしたの?ねえ…」
『裏切り者のくせに、善人ぶるの?笑うんだけど』
「へ…?」
『私の性格を知ってて、わざとあんたの父親と引っ越させたんでしょ!!今さらいい人ぶんないでよ!!』
「えっ……」

後からお義母さんから聞いた。雪は大人の男性が苦手だと。小さい頃に、複数人の男性から暴力を受けて以来、恐怖が絶えないと。その中には、雪の本当の父親も混ざっていたらしい。お義母さんも、お父さんが本当は優しい人だと知っていたから、無理やり止めることはできなかったと言う。
なんで、もっと雪を知らなかったんだろう。なんで、もっと仲良くなれなかったんだろう。
とても悔やんだ。
ずっと泣いた。
…絶対、償うと決めた。
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