終わらない夢
「雪は、なぜか持っていたこの鈴で、死んだひとが集うあの場所に、何度か行っていたの。そこで、雪のおばあさんから愛情という感情をもらった。でも、もともと雪が持っていた感情とは上手く混ざらずに、歪んだものになってしまった。そんな状態で私と会って、私をたぶん都合のいいおもちゃとして捉えたんだと思う。そして、どうにかして私を従わせるために、この世の中自体を作り替えて…私を手に入れようとした。でも上手くいかなくて、そのうちこの世界そのものが…」

言葉に詰まってしまった。この世界がつくられた、偽物でしかないことを、そのまま伝えるべきか。自分が偽りの自分でしかないかもしれないと、突然知らされたら、どう思ってしまうんだろう。
「優奈さん。僕たちは、あなたの隣にいます」
「一緒に考えるよ」
「俺たち、なんでもするからな」
そうだ、そうだよ。なんで忘れちゃうんだろう。私はこんないい仲間に支えられてるのに。迷ってる暇なんか、ないんだ。
「…私たちがいる世界は、本当の世界と、雪が無理やり作り上げてしまった世界が、入り混じってる。だから、仮に雪の問題が解決したら…消えてしまったり、何かが大きく変わるかもしれない」
言っちゃった。でも、大丈夫…
「それだけなの?」
「全部は無くならないんだよな」
「僕たちなら、大丈夫ですよ」
彼はそう言いながら、私をふわっと抱きしめた。なんか、いい匂いする…いや、そうじゃなくて。
「全て、知ってます」
「確信はないけどね!」
「それ…言っていいのか」
知ってる…?本当に知ってるの?それとも、私を安心させるための、口実?
「さあ、どうでしょう。そうだ、優奈さん。見せたいものがあるんです」

連れられた先にあるのは、お賽銭の箱。そういえば、最初に来たときに、ここでお祈りしたっけ。
「優奈さん、門堂で有名な話、ご存知ですか?」
「…?」
「『願いは必ず叶う』です」
必ず、叶う…。お父さんが、そんなこと言ってたっけ。あれ…言ってた?
「なんか、聞いたことあるような、ないような」
「それで構いません。あなたは、本当の世界に戻れるのですから」
「え…なに、どういうこと?」
まさか、私が見てきた世界が、消えてしまうの?咲也、瑠夏ちゃん、翔、夏海さんや悠里さん…みんな、どうなるの?
「みんな、あなたの願いを叶えるために創られた人物。言い換えれば、夢の中です」
「ちょ、ちょっと待って!みんなはどうなるの?」
「俺たちは俺たちで、元に戻るよ」
「また、会えると思う!」
みんなと離れ離れになってしまう…?
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