終わらない夢
「優奈!」
翔が駆け寄ってきた。しかも、今までに見たことがない私服で。
「どうしたの?」
「優奈に、どうしても言いたくて…」
私に言うこと?…なにかあったっけ。
「優奈、好きだ」
「えっ…」
「これまでも、これからも。ずっと大好きだ」
「え、あっ。ええと…」
「俺と付き合ってくれないか?」
「そ、そそそ…そんな急に…」



「優奈さん、さっきから顔赤いですけど。本当に大丈夫なんですか?」
「大丈夫。私が断言する」
「優奈…」
「ふぁぁっ!?」
あ、焦った。…夢か。翔が、急にあんなことを言い出すなんて。なんで夢なのかな。いやそうじゃなくて。…あれ?
「なんでみんなが?」
「翔くんから連絡があってね、休んでるから見舞いに行きたいって」
「どうしても行きたかったらしく…おっと」
「…ふざけるな」
なんだか、いつか見た光景のような気がするけど。やっぱりこの面子は落ち着く。
「さて。優奈ちゃんは起きたみたいだし。今から女子会するよ。ちょっと待ってて」
「わ、分かった」
「それでは」
ふすまが閉じられた。奥では早くも楽しそうな会話の声が聞こえてくる。
「さて。優奈ちゃん」
「は、はい」
「どんな夢を見たのかな。お姉ちゃんに話しなさいっ」
「はい?」
なんで、そうなるの!?私、そんなに寝言言ってたかなあ…。
「顔真っ赤だし、ニヤけるし、幸せそうだし。これは疑うしかないでしょ」
「ええと…」
こればかりは、口が裂けても言えない。翔から告白された夢とか、絶対言えない。
「好きな人でも、出てきた?」
「ふぇっ!?」
「ズボシだな〜?」
「い、いや、それは」
ぐいぐいと瑠夏ちゃんが詰め寄ってくる。今まで見た瑠夏ちゃんのなかで、いちばん気が強いかもしれない。
「誰が出てきたの?」
「……る」
「ん?」
「翔が、出てきた。…ました」
「ほうほう」
ま、まだあるの?
「で?」
「…え?」
「なに言われたの?」
「い、言えない。…です」
ど、どうしよう。これ以上寄られると、言うしかなくなる。なんとか話を逸らさなきゃ。そうだ、この前話した、よく分からない人の話をしよう。
「ね、ねえ。ちょこーっと聞いてほしい話があって」
「うん?」
かかった…!
「この前、翔とだれかが放課後にバスケをしてた時、知らない女の子からすごく話しかけられた」
「女の子…?どんな子?」
「気の強そうな、そんな感じ」
「……ああ」
なにか知っている様子だった。ということは同級生かな。
「あの女、性格悪いよね〜。私大嫌い。えへへ!」
……え?
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