終わらない夢
「なんてね。でも、好きじゃないのは本当だよ」
「…び、びっくりした」
雪のような口調で、恐ろしいことを口にしていた。『えへへ!』は雪がおかしくなりはじめた頃から使っていた口癖。まさかとは思うけど、疑うのも悪いかな。
「大丈夫…だよね」
「心配しないで。……」
「瑠夏ちゃん?」
急に、固まった。瞬きもせず、ただじっとしている。周りの物音もない。風も吹いていないような…いや、吹いていないんだ。ただ、空間が冷たくなったような。
どういうこと…?
「る、瑠夏ちゃん?」
「……」
「ねえ…」
「優奈、騙されちゃダメなんだよ?」
この声はっ…
「雪…!」
「こんな幸せな世界、あったらすぐ死人に狙われちゃう。だから、時々おかしくさせてるのに。まだ幸せなのがいいの?」
なにを言ってるの?私は、ただふつうに生きたいだけなんだよ。
「雪。知ってるなら教えて。ここは何なの?私はどうなるの?」
「さあ。私に分かるのは、もうすぐこの世界が壊れるってことくらい。結局は作りものなんだよ」
「…どういうこと、なの」
「誰かの妄想、あるいは優奈の想像。綺麗事だけの世界は、いつか壊れる」
じゃあ、この世界も、いつか消える…?でも、私はもうなにも望んでいない…。
「いいこと教えてあげる。あの生意気坊主が同い年なのは優奈の妄想。…彼も、いつか消える」
「えっ…?」
「でもね、優奈が持ってる鈴とユーカリの花。そのふたつのおかげで、優奈とその友達は守られてる。逆を言えば、世界が消えても魂が生き残る」
「なら、また新しい世界を…」
「できない。永遠に、暗闇を彷徨うの」
なら、どうしたらいいの?私は…みんなは、ちゃんと生きられるの?
…本当の世界は、ないの?
「いい質問。何にも侵されない本当の世界が、どこかに存在してる。でもね、いつからか迷い込んじゃったんだよ」
「…まさか」
「そう。この河津村に入った時。神サマの力が根強く残るこの地じゃ、何が起こっても不思議じゃない」
「どうしたら戻れるの?」
「『思い出』を捨てて。何もかも忘れて。それで眠った時、はじめて戻れるかもしれないね」
そう言い残して雪は消えた。思い出…たくさんある。彼との思い出、瑠夏ちゃんとの思い出、翔との思い出。ぜんぶ、大事。忘れたくないと強く思った記憶。
「優奈ちゃん、顔色悪いけど…大丈夫?」
「う、うん」
できるはずがない。私は、忘れたくない。
「…び、びっくりした」
雪のような口調で、恐ろしいことを口にしていた。『えへへ!』は雪がおかしくなりはじめた頃から使っていた口癖。まさかとは思うけど、疑うのも悪いかな。
「大丈夫…だよね」
「心配しないで。……」
「瑠夏ちゃん?」
急に、固まった。瞬きもせず、ただじっとしている。周りの物音もない。風も吹いていないような…いや、吹いていないんだ。ただ、空間が冷たくなったような。
どういうこと…?
「る、瑠夏ちゃん?」
「……」
「ねえ…」
「優奈、騙されちゃダメなんだよ?」
この声はっ…
「雪…!」
「こんな幸せな世界、あったらすぐ死人に狙われちゃう。だから、時々おかしくさせてるのに。まだ幸せなのがいいの?」
なにを言ってるの?私は、ただふつうに生きたいだけなんだよ。
「雪。知ってるなら教えて。ここは何なの?私はどうなるの?」
「さあ。私に分かるのは、もうすぐこの世界が壊れるってことくらい。結局は作りものなんだよ」
「…どういうこと、なの」
「誰かの妄想、あるいは優奈の想像。綺麗事だけの世界は、いつか壊れる」
じゃあ、この世界も、いつか消える…?でも、私はもうなにも望んでいない…。
「いいこと教えてあげる。あの生意気坊主が同い年なのは優奈の妄想。…彼も、いつか消える」
「えっ…?」
「でもね、優奈が持ってる鈴とユーカリの花。そのふたつのおかげで、優奈とその友達は守られてる。逆を言えば、世界が消えても魂が生き残る」
「なら、また新しい世界を…」
「できない。永遠に、暗闇を彷徨うの」
なら、どうしたらいいの?私は…みんなは、ちゃんと生きられるの?
…本当の世界は、ないの?
「いい質問。何にも侵されない本当の世界が、どこかに存在してる。でもね、いつからか迷い込んじゃったんだよ」
「…まさか」
「そう。この河津村に入った時。神サマの力が根強く残るこの地じゃ、何が起こっても不思議じゃない」
「どうしたら戻れるの?」
「『思い出』を捨てて。何もかも忘れて。それで眠った時、はじめて戻れるかもしれないね」
そう言い残して雪は消えた。思い出…たくさんある。彼との思い出、瑠夏ちゃんとの思い出、翔との思い出。ぜんぶ、大事。忘れたくないと強く思った記憶。
「優奈ちゃん、顔色悪いけど…大丈夫?」
「う、うん」
できるはずがない。私は、忘れたくない。