今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)

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その日、陽茉莉は営業先から直帰した。最寄り駅で電車を降りて時計を確認すると、まだ午後六時だった。

「今日は早く帰れたし、自炊にしようかなー」

 駅前のスーパーで材料を物色して、携帯エコバッグに詰めて肩に掛ける。
 家に向かい歩く道は、閑静な住宅街だ。

「ケケケ」

 途中、ふと耳障りな声が聞こえた気がして陽茉莉はハッとする。
慌てて周囲を警戒するように見回したが、何も見えなかった。

「イイノミツケタ」

 今度は間違いなく聞こえ、ご機嫌だった気分は一瞬にして凍り付いた。

(ああっ、もう! またなの?)

 陽茉莉は慌てて鞄の中を探る。そして、手探りで探し当てた古ぼけた小さなお守りを、ぎゅっと手に握りしめた。

(大丈夫、大丈夫。お守りがあるんだから)

 陽茉莉は手に握りしめた古ぼけたお守りを胸に寄せ、自分にそう言い聞かせた。


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