今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
相澤はちらりとこちらを振り返ったが、答えることなく歩き続ける。握られた手に、少しだけ力が籠もった気がした。
その手が握られたままなことに、ほっとしている自分がいた。
◇ ◇ ◇
自宅に戻り、お風呂で温かいお湯に浸かるとようやく気持ちが落ち着いてきた。
浴室の鏡で違和感を抱いた首筋から肩にかけてを確認してみたけれど、特に見た目に変化は起きていないことにほっとする。
けれど、パジャマに着替えてひとりで寝室に行くとまた恐怖感が押し寄せてくる。
お守りを会社に置いてきてしまった。相澤の近くにいれば平気だと知っていても、この不安感を完全に拭い去ることはできない。