今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)

「ネエ、チョウダイ。ソノカラダガアレバ、カレニアイニイケル」

 こんなにはっきりと、しっかりと喋る邪鬼に会うのは初めてだった。それだけに、この人ならざる女性が只者ではないとひしひしと感じる。

「いたぞ!」

 高塔が叫ぶ声が聞こえるのと同時に、何かがその女に向かって投げつけられるのが見えた。けれど、女はそれをあざ笑うかのようにひらりと避ける。

「フフフ。ザンネンデシタ」

 キャキャッと声を上げてその女が笑う。そして、狙いを定めるように陽茉莉をねっとりと見つめた。

(怖い……)

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