今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
陽茉莉は首をこくこくと振る。
「キャアア」
今度は少し離れたほうで嫌な悲鳴が聞こえた。相澤がハッとしたようにそちらを向く。高塔が何かと格闘しているのが見えた。
「ちょっと見てくる。陽茉莉、危ないからここにいて」
「うん。わかった」
陽茉莉は走り去ってゆく相澤の後ろ姿を見つめ、両手で自分の体を包むように抱きしめた。
(相澤係長、いつもこんなことしてるんだ……)
先ほどの消えていった邪鬼達の悲痛な叫び声がまだ耳の奥に残っている。
それがこの世界に住むあやかし達の使命とはいえ、感じる恐怖心は同じだろう。
(それにしても、気味が悪いくらい人が通らないな……)