今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
「そうだ。私、礼也さんにお伝えしないといけないことがあって」
陽茉莉は妙な緊張感を覚えてソファーの端に姿勢を正して座り直す。心臓の音を隠すように、努めて明るく話を変えた。
「伝えたいこと? 俺に?」
相澤は首を傾げたが、話を聞こうと思ったようで、陽茉莉の横に腰を下ろした。
「はい。実は、そろそろ居候もご迷惑かと思ったので、引っ越そうかと──」
悠翔から『そろそろお父さんが帰ってくる』と聞いたのは、二週間ほど前。そのときから、ずっと考えていた。
悠翔のお父さんが帰ってくるなら、親子水入らずの家庭に部外者の陽茉莉がいるのは迷惑になるはずだ。ならば、その前に自分はここを出たほうがいい。