今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
「わかった。ちょうど裏手だな。その通りからコンビニの看板が見えないか? そこで待っていてくれたら俺が行く」

 通りの進行方向に目を向けると、確かに数百メートル先にコンビニの看板が光っているのが見えた。

「わかりました」

 陽茉莉はスマホの通話を切ると、そのコンビニに向かって歩き始める。
 そのとき、ゾクッとするような寒気がした。

「イイノガイル。モラッチャオウ」

 ヒヒッという笑い声と共に、すぐ近くから聞こえる声。

(この声って……)

 さび付いた蝶番のようにぎこちなく首を回すと、ガリガリに痩せた小人のような男がいた。目がぎょろりと浮き出ており、側頭部には角のような不自然な膨らみ。こちらをまっすぐに見つめて爛々と目を光らせている。

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