今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
あの事件の翌日、陽茉莉はかつて助けた犬(正確には、犬だと思い込んでいた生き物)が相澤だったのではないかと問い詰めた。
すると、相澤はばつが悪そうにそれを認めた。相澤は最初から、陽茉莉があのとき助けてくれた少女だとわかっていたと。
──それを聞いて、色々と腑に落ちた。
なぜ相澤はこんなにもよくしてくれるのだろうと、陽茉莉はずっと不思議に思っていた。明らかに、部下を心配する上司の範疇を超えている。
もしかして、相澤は自分に特別な気持ちを持っていてくれているのではないか?
そんなことを思ったこともあるけれど、いまいち自信が持てなかった。
相手は仕事ができて社内女子に大人気のイケメン。対する自分は、仕事が特別できるわけでもなければ、見た目も平凡の範疇に入るだろう。
それに何よりも、これだけ一緒に過ごしながら相澤は一度たりとも陽茉莉に手を出そうとしないし、そんな雰囲気になったこともない。それは相澤が陽茉莉を女として見ていない証拠のようにも思えた。