今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
 元々子供が好きということもあるだろうし、四人兄弟の長女で小さな頃から弟と妹の世話をしていたと言っていたので、子供の相手に慣れているのだろう。

 悠翔がスプーンをお皿から口に運ぶ。
 目の前に置かれた食べかけのお皿には、卵に包まれたチキンライスが少し残っていた。

「これは、オムライス?」
「そうです。はい、どうぞ」

 トレーに乗せて相澤の食事を持ってきた陽茉莉が、相澤の前に食事を並べてゆく。そして、最後に置かれたお皿を見て相澤は目を瞬かせる。

『おつかれさま!』

 黄色い卵の上に、ケチャップで書かれた文字を読み、相澤は思わず笑みを漏らす。
 スプーンで掬い上げて一口食べると、素朴で優しい味が口の中に広がった。
< 74 / 296 >

この作品をシェア

pagetop