今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
 そんなことを考えていると、鋭い声が飛んできた。

「新山、聞いてるか?」
「はい。聞いています」
「俺の言ったこと、わかってる」
「他社向けの提案書をコピペするなってことですよね?」
「全然違う。対話をするときに相手の目線に立てって言っているんだ」

 冷静に、しかし容赦なく否定される。
 今、陽茉莉が上司の相澤に見せているのは、今度使用する予定の営業提案書だ。
 以前から付き合いのあるリラクゼーションサロンに、新たに商品を売り込もうとしている。
 この営業は陽茉莉が担当することになっており、これまで作成してきた営業提案書をベースに今の売れ筋商品を載せている。陽茉莉としては可もなく不可もない、それなりによくできた提案書だと思っていた。

 しかし、相澤の評価は違ったらしい。
 で、完成した提案書を確認してもらったところ、この説教タイムに入ったわけである。

< 76 / 296 >

この作品をシェア

pagetop