今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)

 陽茉莉がにこりと笑うと、相澤は眉根を寄せる。
 そのとき、何かを言いたげなように見えたのだが、結局は何も言われなかったのでわからずじまいだ。

「機嫌がいいのは、生活環境が変わったせい?」
「機嫌がいい?」
「ええ。とってもよさそうに見えるわ」

 潤ちゃんはにこりと微笑むと、陽茉莉にいつものようにジントニックを差し出す。
 陽茉莉が一口飲むと、口の中にシュワシュワとした味わいが広がった。

「この前ね、営業先のお客様に、すっごく褒められたの」
「あら、すごいじゃない」
「うん。ちょうどこんなのが欲しかったって言われて、年間契約を結んでもらえることになった」

 陽茉莉は褒められたことが少し照れくさくて、それを隠すようにはにかむ。

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