並行世界-パラレルワールド-サチside
噂-サチsaid-
「レンって彼氏と他二人を三股しているんでしょ?」
「マジ?ビッチじゃん。さすがー」
『そういうお前らがしてんじゃねーの、三股。』
なんて言えたらどんなにスッキリするだろう。
うちの友だちがずっと言われっぱなしの悪口に対してうちは何も言い返せずにいつも過ごしている。
うちの友だちレンは毎日ありもしない噂を流されて、もう諦めているのか、無視しているだけで耐えているのかはよく分からない。
でも、きっといい気はしていないと思う。
そう考えながら教室のドアを開けた。また悪口言われてたんだろうな、いつものように俯いているレンを見つけて、一言。
「おはようレン」
暗かったレンの顔が曖昧に笑う。いつもそう。
「おはようサチ。今日も寒いね。」
だいたい毎朝の会話は決まってる。そしてレンの表情も。
無理して笑ってるのは知ってる。それでもうちのことを1番信頼してくれてるのもわかってる。
だから、今はぎこちない笑顔でも、いつかうちが本当の笑顔で学校に来れるようにしてあげようって思っている。
「寒いね。ところで最近どう?」
どうというのはレンの悪口を言うヤツらのこと。
その時突然、
「サチおはよ!」
トキだ。レンの悪口を言っている中心人物で、レンと同じソフトテニス部の女子。
なんか好かれちゃって、毎朝挨拶してくるの。でも絶対レンには挨拶しないんだよね。
もちろんレンもトキのこと大っ嫌い。
「トキ遅い!早く来て!」
「ごめんリホ。今行く!」
大声でそんなことを話しながらトキは廊下に消えていった。
「よく飽きないねぇ。うちが来たとき、他の人も溜まっていたよ」
悪口を言い始めたトキを中心としたソフトテニス部。毎朝廊下でレンの悪口言ってるの。
それを聞きながら教室に向かうのが日常茶飯事。
でもいつも言ってることに進展は無い。
同じことを毎日話して何が楽しんだか。
「本当、馬鹿馬鹿しい」
そうレンは言ったが、本心から出ているのかは分からない。きっと本当は辛いんだと思う。
「そろそろ朝の会じゃん。またあとでね」
「うん、また」
それぞれ席につくとちょうどチャイムが鳴った。扉が開く。
入ってきたのは遅刻の生徒でもなく担任でもない、学年主任だった。
教室が少し騒がしくなる。
先生の声が響くとみんな素直に静かになった。
「担任の藤川先生ですが、胃腸炎で昨日から入院なさっていてしばらく退院できません。私も他の先生も授業があるため自習が多くなってしまいますが、静かにしっかりやるように」
控えめに言っても最悪。
先生がいれば多少はマシになる悪口がひどくなる。
教室に先生がいてくれることだけが頼りだってレンは前に言ってたのに。
騒がしくなって終わった朝の会、担任がいないと喜ぶクラスメイトに紛れてレンは一人で静かに絶望しているように見えた。
元々のターゲットはレンじゃなかった。
それがいつの間にかターゲットはレンになっていて、気が付いたら孤立していた。
変わった時期は定かではないけれど、五月中旬だったと思う。
ある日突然、それまで仲が良かったはずのトキから冷たくされたらしい。
驚いたけど気分屋だから、と笑って言っていたのを覚えている。
『明日には戻っている』
そうアドバイスしたうちが馬鹿だった。
トキから部活へ、部活からクラスへ、クラスから学年へ。
まるでインフルエンザのように、流行りのファッションのように、冷たい態度は伝染し、日に日にヒートアップし、ブレーキを知らないまま加速した。
「マジ?ビッチじゃん。さすがー」
『そういうお前らがしてんじゃねーの、三股。』
なんて言えたらどんなにスッキリするだろう。
うちの友だちがずっと言われっぱなしの悪口に対してうちは何も言い返せずにいつも過ごしている。
うちの友だちレンは毎日ありもしない噂を流されて、もう諦めているのか、無視しているだけで耐えているのかはよく分からない。
でも、きっといい気はしていないと思う。
そう考えながら教室のドアを開けた。また悪口言われてたんだろうな、いつものように俯いているレンを見つけて、一言。
「おはようレン」
暗かったレンの顔が曖昧に笑う。いつもそう。
「おはようサチ。今日も寒いね。」
だいたい毎朝の会話は決まってる。そしてレンの表情も。
無理して笑ってるのは知ってる。それでもうちのことを1番信頼してくれてるのもわかってる。
だから、今はぎこちない笑顔でも、いつかうちが本当の笑顔で学校に来れるようにしてあげようって思っている。
「寒いね。ところで最近どう?」
どうというのはレンの悪口を言うヤツらのこと。
その時突然、
「サチおはよ!」
トキだ。レンの悪口を言っている中心人物で、レンと同じソフトテニス部の女子。
なんか好かれちゃって、毎朝挨拶してくるの。でも絶対レンには挨拶しないんだよね。
もちろんレンもトキのこと大っ嫌い。
「トキ遅い!早く来て!」
「ごめんリホ。今行く!」
大声でそんなことを話しながらトキは廊下に消えていった。
「よく飽きないねぇ。うちが来たとき、他の人も溜まっていたよ」
悪口を言い始めたトキを中心としたソフトテニス部。毎朝廊下でレンの悪口言ってるの。
それを聞きながら教室に向かうのが日常茶飯事。
でもいつも言ってることに進展は無い。
同じことを毎日話して何が楽しんだか。
「本当、馬鹿馬鹿しい」
そうレンは言ったが、本心から出ているのかは分からない。きっと本当は辛いんだと思う。
「そろそろ朝の会じゃん。またあとでね」
「うん、また」
それぞれ席につくとちょうどチャイムが鳴った。扉が開く。
入ってきたのは遅刻の生徒でもなく担任でもない、学年主任だった。
教室が少し騒がしくなる。
先生の声が響くとみんな素直に静かになった。
「担任の藤川先生ですが、胃腸炎で昨日から入院なさっていてしばらく退院できません。私も他の先生も授業があるため自習が多くなってしまいますが、静かにしっかりやるように」
控えめに言っても最悪。
先生がいれば多少はマシになる悪口がひどくなる。
教室に先生がいてくれることだけが頼りだってレンは前に言ってたのに。
騒がしくなって終わった朝の会、担任がいないと喜ぶクラスメイトに紛れてレンは一人で静かに絶望しているように見えた。
元々のターゲットはレンじゃなかった。
それがいつの間にかターゲットはレンになっていて、気が付いたら孤立していた。
変わった時期は定かではないけれど、五月中旬だったと思う。
ある日突然、それまで仲が良かったはずのトキから冷たくされたらしい。
驚いたけど気分屋だから、と笑って言っていたのを覚えている。
『明日には戻っている』
そうアドバイスしたうちが馬鹿だった。
トキから部活へ、部活からクラスへ、クラスから学年へ。
まるでインフルエンザのように、流行りのファッションのように、冷たい態度は伝染し、日に日にヒートアップし、ブレーキを知らないまま加速した。