翠玉の監察医 Lasting Night
一 探偵からの頼み事
最年少監察医である神楽蘭(かぐららん)は、体に重みを感じて目を開ける。すると、目の前に恋人である三国星夜(みくにせいや)の顔があり、蘭は少し驚いてしまった。

星夜を救出したアメリカでの戦いが終わって一年。蘭と星夜はやっと訪れた平穏な日常に喜びを感じつつ、日本の世界法医学研究所で監察医として働く日々を送っていた。

蘭と星夜は二人で暮らすためのいい物件が見つかるまで、世界法医学研究所の所長である紺野碧子(こんのあおこ)の家で暮らしていた。寝室は別々のはずなのだが、何故か星夜が蘭の部屋で眠っている。

「星夜さん、起きてください」

蘭は軽く星夜の頬に触れる。しかし、星夜は「う〜ん」と言いながら蘭を抱き枕のように抱き締める。がっちりと固定されてしまい、逃げられなくなる。

「星夜さん!」

蘭は逃げようとするが、星夜は全く離そうとしない。星夜に体術を使うわけにもいかず、蘭は諦めて星夜が起きるのを待つことにした。その胸はまるで全力で走った後のように高鳴っている。
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