翠玉の監察医 Lasting Night
蘭はどう思う?と星夜に訊ねられ、星夜の話を聞いていた蘭も口を開いた。

「事故に遭ったご遺体にしては、切り傷があまりにも深すぎます。写真ですので憶測でしかないのですが、この傷の大きさや深さから見て、刃渡り十三センチから十六センチの斧やナタといった銃刀法違反になるような刃物で全身を刺され、殺害されたと見られます」

交通事故と言われた遺体を一瞬にして「事件によるもの」と判断した二人に、圭介は「やっぱり監察医ってすごいですね」と感心する。

「それで?僕らにしてほしいことってこのご遺体の解剖?」

星夜が圭介に訊ねると、圭介は「いえ、お二人の意思に任せるんですけど、一緒に村に来てもらえませんか?」と言った。

「僕は村に帰って、何が起きているのか友達に聞くつもりです。ですが、本当に事件だった場合、ご遺体の管理などをお二人に任せたいんです」

蘭と星夜は顔を見合わせる。日本では法医学が遅れているという理由で、闇に埋もれていく事件もあるのだ。そして何より、アメリカで共に戦ってくれた人の頼みを断るという選択肢はない。
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