翠玉の監察医　Lasting Night
「都会から見たら不便で何もないと思いますけど、ここが俺の育った場所です」

圭介が蘭と星夜に笑いかけながら言う。確かに、目の前に広がっているのは田んぼと山々、そして距離が離れた家々だ。お店を都会のようにたくさん見かけることもなく、都会から見れば確かに不便だろう。

「確かに都会より不便そうだけど、何もないってことはないと思うな」

星夜が新鮮な空気を大きく吸い込み、笑う。蘭もコクリと頷いた。

美しい緑やこの空気は、都会では味わえない。蘭は初めて見る景色を星夜のそばで見つめる。その時、「圭介〜！久しぶり！」と誰かが走ってきた。

息を切らしつつも、泥のついた作業着を着たその男性は笑顔だ。そして、男性は蘭と星夜に向けて手を差し出す。

「初めまして、僕は太田渉（おおたわたる）。圭介とは幼なじみってとこかな？来てくれてありがとうございます」

蘭と星夜は頭を下げ、それぞれ自己紹介をする。

「お初にお目にかかります。世界法医学研究所の監察医、神楽蘭です」

「同じく世界法医学研究所の監察医、三国星夜です」

握手を交わし、駅から圭介の家に向かうため、駐車場へと歩く。その道中、村人と思われる人物に数人ほど出会った。圭介の知り合いのようで、圭介は「お久しぶりです！」と言って笑う。その様子を、蘭と星夜はジッと観察していた。
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