翠玉の監察医 Lasting Night
「あら、圭介くん。帰ってきてたのね」

「典子(のりこ)さん、お久しぶりです」

和やかに微笑む圭介に対し、女性は笑いながらもどこか冷ややかな目を向ける。

「この村にいるのなら、この村のルールに従うのよね?」

「ルール?そんなのありましたっけ?」

首を傾げる圭介に対し、女性はさらに恐ろしい笑顔を向ける。慌てて渉が圭介と女性の間に立った。

「典子さん!圭介は帰ってきたばかりで疲れていると思います。それに、圭介はもう何年もこの村に帰ってきてないんですから、ルールなんて知りません」

「それもそうね……。渉くん、圭介くんやそこの二人にも説明をしておいて」

そう言い、女性はクルリと背を向けて歩いていく。彼女だけでなく、出会った村人全員が同じことを言う。蘭の目に警戒の色が点灯し、圭介は「一体、何が起きてるんだ?」と渉を見つめる。

「と、とりあえず車の中で話すよ」

渉はそう言い、車の鍵を開けて押し込めるように蘭たちを車の中に入れる。そして勢いよく走り出した。
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