運命の一夜を越えて
「あそこ」
「ん?」

病院の隣にある広い広い病院の庭には小高い丘があり、私はその頂上から病室の方を指さした。

「ん?」
私の指さすほうをみつめながら渉は何を言っているのかまだわからない様子で、すぐに私の方を見た。

「私がずっと入院してた小児病棟。」
「え?」
私の言葉に渉の表情が一瞬で驚きに変わる。

「私、がんだったの」
「・・・」
あまりの驚きに声もでないらしい。

「生きるか死ぬかの戦いを、あの病室で3年間してた。」
「・・・・」
衝撃が多き過ぎるらしくて渉は珍しく何も口から言葉を出せずにいる。
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