運命の一夜を越えて
「余命宣告もされて、本当に死が目の前にあったこともある。」
「・・・彩・・・」
「でも、臍帯血輸血で私は奇跡的に助かった。」
繋いでいる手が震えているのは、きっと私だけの震えじゃない・・・

「私が助かって、日常生活を送れるようになったとき、父が今度はがんになった」
「・・・」
「どうして私なのって・・・いつも思いながらあの場所で私は戦ってた。だから・・・なんかお父さんに・・・私の病気が飛んで行っちゃったのかなって・・・」
ずっと心で思ってきたことを言葉にしたら、泣きそうになって声が震えた。

衝撃的な話を打ち明けられたばかりなのに、渉は泣き出しそうな私とつないでいた手をグイっと自分の方へ引き寄せた。

アッという間に私は渉のぬくもりに包まれる。

「黙っててごめんなさい。言わないでごめんなさい。」
ずっとずっと誰にも言えずに心の中で思い続けて来たこと。
言葉にしたとたんにいろいろな感情があふれて止まらなくなった。
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