運命の一夜を越えて
すべてを話し終えた時、渉はしばらく何も言わずに私を自分の胸の中に抱きしめて包み込んだ。

そして・・・


「彩・・・結婚しよう。」
「何言ってるの？私は・・・」
「俺が一緒にいたいのは彩だ。俺は彩といたい。」
「でも・・・」
「俺は彩と一緒にいたい。俺の幸せは彩が持ってる。」
「持ってない」
「彩といられるだけで、俺は心満たされる。」
「でも、いつか満たされなくなる。」
抱きしめたまま渉は話続ける。

「いつも、俺は自分の気持ちを押し殺して生きて来た。」
「・・・え・・・？」
「言ったところで誰かが困ったり、誰かの負担になる気がして言えずに来たんだ。いつの間にかそれが心地よくなっていった。言わずにいれば、誰からも嫌われず、誰からも迷惑がられない。だからか友達だって多い。でも、本心を言えるような人って正直いないんだ。」
渉のお父さんの言葉を思いだす。
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