運命の一夜を越えて
渉が取り戻してくれた私の”感覚”。
「我慢してたのね」
そう言って涙ぐむ母。

違う・・・我慢していたんじゃない・・・
やっとすべての感覚が戻った時、私は祖母がもういないということを実感できたんだ・・・。

止まらない涙に母は少し部屋で休んで顔を洗ってくるように言った。
もうすぐ葬儀会社の人も親戚も来る。
今夜は通夜があり、明日は葬儀がある。
忙しい時間がはじまる前に、気持ちを立て直さなくてはならないと、私は再び部屋に戻り、気持ちを落ち着けた。

「大丈夫か」
渉が着替えをしに私のいた部屋に入ってきた。
「大丈夫。ごめんね。」
謝りながら私が立ち上がると、渉は両手を広げた。

「おいで」
そう言われて私は渉の胸の中に入る。
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