運命の一夜を越えて
「大丈夫じゃないくせに」
「大丈夫なの。渉が来てくれたから、大丈夫。」
「そういう意味か」
「本当に、私、全部の感覚がマヒしてたの。それが今になって急に戻ってきた。梅干しもちゃんとすっぱかったし、渉に抱きしめられると温かかった。おばあちゃんが亡くなったこと、頭ではわかってたのに、実感がわかなくて・・・」
また涙があふれてくる。
「今になって・・・あーもうおばあちゃんいないんだって・・・」
「うん」
「実感したら・・・だめだね・・・」
「だめじゃない。」
抱きしめながら背中をさすられて、私の涙はさらにあふれる。

「泣いていいんだよ。つらい時はつらいって言っていい。全部受け止めるから。そのために俺がいるんだから」
「・・・ありがとう」
「不謹慎だけどうれしいんだ。頼ってくれると、必要とされると。」
「・・・大好き」
「愛してる」
一人では乗り越えられないようなことも二人なら乗り越えられるのかもしれないと思いながら私は目を閉じた。
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