運命の一夜を越えて
まして、私の薬指には結婚指輪。

ふと視界に結婚指輪が見えるだけで私は少しにやけてしまった。

「またにやけてる」
「いいでしょー。」
玄関で私を待ってくれていた渉につかまりながら靴を履くと渉はすぐに私を支えてくれた。
「帰りに何食べる?」
今年も夕べから絶食の私に付き合って、渉も食事をとっていない。
私に付き合わなくてもいいと言ったのに、渉は絶対に食べないときかなかった。

こういうところは頑固だ。

「お腹すいてるなら食べていいのに。」
「だめなの。これは俺の恒例行事にするんだから。」
「恒例行事?」
「そう。願掛けみたいなもん」
「何よそれ。」
「行ってきます」
そう言って渉がそっと触れたのは私が家の玄関に飾った天使のガラス細工。
渉が私にくれた天使たちを私たちの住むマンションの玄関にお花と一緒に飾っている。
私たちは笑いながら手を絡ませ、家を出た。
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