運命の一夜を越えて
「今日の今日で一気にいろいろとお伝えしてしまってすみません。今日はひとまず妊娠に影響のない検査を進めて、一度帰宅しましょう。あまり長い時間は待てませんが、二人のお気持ちが固まったら検査をしましょう。」
すかさず高梨先生が言葉を続ける。
「あまり奥様を興奮するのはよくありませんよ。これから産婦人科で検査をしますので、その間ご主人は付き添えません。一度外の空気を吸ってきてください。30分ほどで戻ってまいりますので。」
医師の言葉に、渉は私からすっと体を離して病室を出て行った。


背中を向けて病室から出ていく渉。

眠るときも、一緒にいる時も、渉は私に背中を向けない。

なのに・・・明らかに出会って来た中で一番感情的になっている渉は、私に躊躇なく背中を向けて病室から出て行った。

私が新しい命を選ぶということは・・・私自身の命をあきらめるということだ・・・。

渉の気持ちがわかるからこそ・・・心が痛んだ。
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