運命の一夜を越えて
「だから・・・」
渉も、言葉に詰まる。

私は握られている手をそっと動かし、重ねてお腹に触れている渉の手をギュッと握った。

「だから」
渉が私の方をまっすぐに見つめている。

「だから生きることをあきらめないでほしい。」
「うん・・・」
「どんな時も、これからどんなことがあっても、諦めないでほしい。」
「うん・・・」
「愛してる。」
「私も・・・愛してる・・・」
「生きよう。俺と、彩と、この子と。」

渉は私の体をそっと抱きしめた。

その胸はお日様の香りと温かさを持っている。
私の大好きな場所だ。
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