運命の一夜を越えて
『大丈夫?』
出会ったのは合コン。
私は出会いを求めてはいなかった。ただ、頭数をあわせるためだけに呼ばれたんだった。

食べたいものを食べて、飲みたいものをのんで、トイレで休憩をしたあと、彼は廊下で待っていた。

愛想笑いを浮かべた私を指さして、『それ、嘘の笑いだ。』と言った彼。

私の嘘を見事に見抜いて、私の愛想笑いすら気づいてしまう彼。


誰とも深く関わらないと決めていたのに、いつの間にか心を開いてしまう感覚に、はじめは戸惑った。

誰かと深く関わっても、私は死んでしまうかもしれないという思いがずっとあった。
病気を克服しても、また暗闇に引きずり込まれるかもしれない。

それに私なんかが幸せになったらいけないと、父を想うたびにそう考えてしまっていた。

愛する人ができることが怖かった。
たとえ愛する人ができても、私はその人に本当の愛はあげられないから。
< 460 / 498 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop