運命の一夜を越えて
ベッドに横になったままの私。
出産を終えて数日間私は意識がなかった。

意識が戻ってから再び詳しい検査をして、首のリンパ節に転移している病巣を除去することになったのだ。

少しでも長く生きるためには仕方のない、避けられないこと。

そうわかっていても、いざ声を失うかと思うと複雑な気持ちになる。

「渉・・・」
「ん?」
私が呼ぶと、部屋の明かりを消して枕元の小さな明かりをつけた渉が、私の横に寄り添うように寝転がる。

「どうした?」
どこまでも優しい声で私を見つめる。

何もないと首を横に振る。
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