運命の一夜を越えて
「戸田彩さん」
名前を呼ばれて現実に引き戻される私。

もう少しだけ・・・温かなこの場所に居たかったという素直な想いはしまい込んで、残っているわずかな力を振り絞った。

「大丈夫ですか?」
私の様子を心配した看護師さんがすぐ近くに来てくれる。
白衣の天使だ。きれいな人。
まだそんなことを考える余裕が残されていることに驚きながら私は椅子から立ち上がろうとした。

「診察室まで行きます。」
隣からそんな声が聞こえたかと思うと、急に私の体が宙に浮いた。

「・・・っ?」

瀬川渉はいとも簡単そうに私の体をお姫様抱っこして、診察室まで運んでくれたのだった。

・・・かなり至近距離で彼の顔がある。
心配そうな顔・・・眉間にしわを寄せてる・・・。
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