運命の一夜を越えて
不思議だ・・・

幼いころ・・・私は自分の病気のことをよく理解はしていなかった。
死とは何かもちゃんと理解はしていなかった。

でも、両親の悲しそうな表情や、隠している涙に気づくたびにそれはとんでもなく悲しくてつらくて苦しくて痛いことなのだろうと思っていた。

怖かった。

そんな悲しくてつらくて苦しくて痛いこと。

でも・・・私は恐怖におびえることよりも、両親を心配した。

だって見て来たから。知っているから。
いつだって私が点滴をしたり、苦い薬を飲むだけで、私よりも痛そうなつらそうな顔をする両親を。

私が悲しくてつらくて苦しくて痛い”死”を迎えた時、きっと両親は私以上に悲しくてつらくて苦しく痛いのだろうと思ったから・・・
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