誰よりも近くで笑顔が見たい

なのちゃんが言ってくれる。


「あ、じゃあ、名前、教えてくれる？」


杉本くんは、素直に言い方を変えてくれた。


目を合わせられて声が出なくなる。


「高、坂……蘭、です」


途切れ途切れの小さな声だったけど、杉本くんは優しく笑って頷いてくれた。


「蘭ちゃんかあ。ほら、蓮も自己紹介」


杉本くんは、確かめるように私の名前を言葉にしてからその男の子を引っ張った。


「桜玖、引っ張るな」


「いいからいいから」


その男の子の鋭い視線なんか気にせずに促す。


「上原、蓮っす」


なんで、敬語みたいな感じなんだろう……？


そう思いながらもお辞儀で返す。


「ねえ、蘭ちゃんって男嫌い？」


また杉本くんに目を合わせられて少し怖くなる。


「あー、男性恐怖症って感じかな？」