誰よりも近くで笑顔が見たい
あ、上原くんにお礼、言わなくちゃ。


そう思うと、勝手な身体が動いていた。


「……!」


夢中で上原くんの制服の裾を掴むと彼は、驚いた顔でこっちを見つめる。


「あの……」


言わなきゃ、お礼を。


「あり、がとう。き、のう……」


言えた、聞こえたかな……。


そう思って、上原くんを見上げると彼は少しだけ、ほんのかすかに笑っていた。


「ああ」


そう一言だけ、返事をくれた。


それが嬉しくて、久しぶりに笑顔になる。


「蘭が、笑ってる……」


「うわ、めちゃ可愛い」


そう言った2人の声を聞きながら上原くんを見る。


彼は、少し顔を赤らめて軽く頷くと出て行ってしまった。


でも、私は満足。


空は、青くて涼しい風が吹いてる。
< 12 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop