誰よりも近くで笑顔が見たい
〜菜乃花side〜


「う……。振られ、ちゃった……」


そう言って涙を流す蘭を抱きしめながら、考える。


蘭が泣いてるのを最後に見たのは、何年ぶりだろうかと。


蘭は、感情の起伏がほとんどない子だった。


私たちが出会ったときから、感情が読み取りにくくて私といて楽しいのかずっと不思議だった。


でも、上原くんと出会ってから蘭は変わった。


自覚はないみたいだけど、よく笑うようになって、話すようになった。


だからこそ、上原くんが蘭を振ったのが信じられない。


きっと、この2人はお互いにお互いがどれだけ好きなのか、知らないんだと思う。


上原くんを見たときに蘭がどれだけ嬉しそうにするのか。


上原くんのいないところで、蘭がどれだけ上原くんの話をしてくれるか。
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