誰よりも近くで笑顔が見たい
水谷先輩のときに弁当を一緒に食べない期間は、どこか物足りなくてさみしかった。


そんな頃だと思う、好きだと自覚してしまったのは。


林間学校の時は、本気で心配して。


夏祭りの時は、付き合えたのが嬉しくて。


試合の時は、高坂さんの応援のおかげで頑張れた。


クリスマス、体調が悪いのを忘れるくらい楽しくて。


倒れた俺が目を覚ましたら、隣にマフラーが置いてあった。


あとから高坂さんが置いて行ったと、兄貴が教えてくれた。


初詣の時、会えたのが嬉しくて。


今なら、兄貴と話してたときに感じた感情が嫉妬だってわかる。


兄貴と話す時の表情は、俺と話してる時と違って見えた。


兄貴の話を楽しんでるように見えた。


「それ、いつか蘭ちゃんに伝えてやれよ」


そう言った桜玖は、降り出したらしい雪を見ている。


伝える時は、ないと思うから俺が知ってればいい。


蘇ってくる高坂さんとの思い出は、まだ未練が残ってることを教えてくれる。


ごめん、蘭……。


まだ、好き。
< 150 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop