誰よりも近くで笑顔が見たい
「あれ、高坂蘭、じゃね?」


願い虚しく、すぐに見つかってしまった。


「ねえ、何してんの?」


この前とは違う人だけど、ネクタイの色は2年生の色。


しかも、2人……。


「友達、待ってるのかな?」


身体が動かない。


ドクドクと波打つような心臓の音が聞こえる。


「一緒に帰ろうよ」


なのちゃんが部活の時、こういうことがあったけど、無視して俯いてたらいつのまにか諦めてくれてた。


でも、今はもう動くことすらできない。


「ねえ、聞いてる?」


手首を掴まれて身体中に力が入る。


もう1人の人は、私のバッグを持ってる。


このまま、連れてかれちゃうのかな……。


「……いやっ」


なんとか出した声をその人は無視して私の腕を引っ張る。


バサッと本が落ちて土で汚れてしまった。
< 22 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop