誰よりも近くで笑顔が見たい
「なんで、最近、中庭に来ないんすか」


嫌なところをつかれた。


「俺、なんかしたなら謝ります。だからまた……」


そこまで言って、上原くんは俯いた。


「上原くん、は……よく話す、人の、方がいい?」


突然の私の問いかけに上原くんは顔をあげる。


「そりゃ、いっぱい話してくれる方が楽しいっすけど……」


やっぱり……。


私じゃ、ダメだ。


「でも、話さなくても楽しいのは、高坂さんだけっす」


俯きかけた顔を上げてくれたのは、そんな言葉だった。


私だけ……。


「それと、俺と水谷先輩は何もないっす。ただの部員とマネージャー。だから、気にしないで欲しい」


私の欲しい言葉を彼は、くれる。


聞きたいことを先に察して、答えてくれる。


「だから、また、弁当、ここに食べに来て」


真っ直ぐな瞳でそう言われ、私は頷くしかできなかった。
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