誰よりも近くで笑顔が見たい
そんな時だった。


「高坂さん!」


あの人の声が私に届いたのは。


「上原、くん?」


そう呟くと上の方に傘をさした上原くんが見えた。


「動かないで!」


そう言うと彼は、私の方へ走ってきた。


私の元へ辿り着くと、安心したように頬を緩ませて顔を覗き込んでくれた。


「怪我とか、してないっすか?」


さっきの必死な感じとは、打って変わって冷静に彼は、言った。


「足……」


そう呟くと、上原くんはすぐに私の足に目をやった。


「触れても、大丈夫っすか?」


頷くと上原くんは、出来るだけ触れる面積を狭くして私の足に指を置いた。


熱を持った足には、冷たい指が心地よかった。


「ちょっと、動かします」


「いっ……」


上原くんは、私の足首を曲げてみたりして確認してくれてる。
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