誰よりも近くで笑顔が見たい
「痛いっすか?」


素直に頷いた。


「じゃあ、背負うんでとりあえず、このジャージ着てください」


そう言われて、素直にジャージを受け取る。


「上原くん、寒く、ない?」


「平気っす」


そう言われて、自分のジャージの上から上原くんのジャージを着る。


背は、あんまり変わらないのにぶかぶかで、男の子なんだって思う。


なんとなく上原くんを見ると、顔がほんのり赤くなってる。


「乗ってください」


それを隠すように、上原くんが私の前にしゃがみ込む。


「歩け、るよ?」


「いいから」


いつもより乱暴な物言いに驚いて上原くんの背中に身体を預ける。


上原くんは、軽々と立ち上がって片手で私を支えながら傘をさす。


私が濡れないように傘の位置を調節すると歩き出した。
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