誰よりも近くで笑顔が見たい
無言の時間が流れる。


さっきまでのよく話す上原くんは、どこへ行ったのだろうと思うけど、こっちの方がいつも通りで安心する。


こんなにも静かなのに、私の心臓は騒がしい。


上原くんに、聞こえないかな?


不安になりながら、上原くんを見ると耳が赤くなってる。


きっと、私も耳まで真っ赤だ。


自分の心臓の音と、上原くんが踏む葉っぱの音を聞きながら、上原くんに体重を預けた。


しばらくすると、コテージが見えてきた。


気づかなかったけど、もう夕方。


空がオレンジ色。


「先生、見つけました」


「ああ、ありがとな。怪我とかは?」


「たぶん、捻挫だと思います。手当、してもらえますか?」


「じゃあ、こっちだ。運んでくれるか?」


「はい」


上原くんは、私を下ろす気はないらしい。
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