誰よりも近くで笑顔が見たい
私は、特別じゃない。


じゃあ、上原くんは誰にでもこうやって一緒に傘に入るの?


怪我して、迷子になってたら落ち着きをなくすほど心配するの?


全部、聞けたら楽なのに私には、それができない。


せっかく、想えたのに。


上原くんが好きだって、自覚できたのに……。


また、失恋して終わっちゃうの?


そんなことを考えていたら、あっという間に私の割り当てのコテージに着いてしまった。


「ありがとう」


それだけ言って、コテージの階段を上がろうとする。


「高坂さん」


突然名前を呼ばれて、振り返ると真剣な顔をした上原くんがこっちを見ていた。


びっくりして、彼の元へと戻る。


「さっき、特別じゃないって言ったすけど……」


そう言うと、上原くんは覚悟を決めるように息を吐いた。
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