誰よりも近くで笑顔が見たい
嬉しそうにこっちを振り返ったのは、杉本くん。


「勝手にやってろよ」


呆れたように上原くんが言う。


「じゃあ遠慮なく。おじさん、射的やらせて!」


私たちも2人に追いついて、杉本くんが射的をする姿を見る。


5回打った球は、すべて狙いのギリギリ横をかすって外れてしまった。


「相変わらず、下手だな」


参加賞の飴に落ち込む杉本くんを見て、上原くんがおじさんに声をかける。


鉄砲とコルクの球をもらった上原くんは、狙いを定めて引き金を引いた。


真っ直ぐに飛んでいった球は、見事に杉本くんが狙っていたお菓子に命中して、後ろへ倒れた。


「お見事!おめでとう」


そう言って、おじさんが上原くんにお菓子を手渡す。


「蓮、俺の取れなかったやつ取るとか、嫌がらせかよ!」


全然怒ってるように見えない杉本くんが、ぷくっと膨れる。
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